オルデンバーグ

★★★★金子 務

17 世紀、世界最初の学術誌『フィロソフィカル・トランザクションズ』を生んだヘンリー・オルデンバーグを軸に、近代科学の黎明期を描いた科学史の本。

それまで研究成果は秘匿され、独占されることで権力と結びつくのが常だった。これに対してオルデンバーグは「知の公開」と交換に積極的に働きかけ、同時に研究の先取権(プライオリティ)の確立にも腐心した。学術誌という仕組みが、この二つを両立させる発明だったことがよくわかる。

読んでいて現代に引きつけて考えたのは、生データの公開の話だ。今もなお、生データが公開されないことは多い。かつては誌面の都合という理由もあったが、科学全体のために言えば、公開しない理由はほとんどない。オルデンバーグがどうやって研究者に成果の秘匿をやめさせ、公開へ向かわせたのか——その手腕は、オープンサイエンスを考えるうえで示唆に富む。

なお本書は、オルデンバーグを中心とした群像劇のような趣で、周辺人物や歴史的エピソードにも相当の紙幅を割く。科学史・歴史全般の基礎知識がないと読み進めるのに時間がかかる。科学史や学術誌の歴史を調べる最初の一冊としては勧めにくく、中級者向けだと思う。

Amazon で見る: オルデンバーグ