科学の困ったウラ事情
研究の現場が抱える課題——社会貢献や実用性を常に要求されること、論文業績などの数値が重視されること、科学の商業化と研究不正、学術誌が論文の質をどこまで担保できるのか——を、著者が忌憚なく論じる一冊。
読みながら引っかかった点も多かった。たとえば「研究者が職人からサラリーマンへ変化した」ことは、必ずしも悪いことなのだろうか。研究者の二分化という面ではそうかもしれないが、成熟して分業が確立したとも言える(PI と研究補助員の待遇差は是正されるべきだが)。学術誌が質を担保しきれないという問題も、研究分野が広く深くなるほど避けられないのなら、出版時に無理に質を評価せず後世の評価に委ねるのも、ひとつの妥当な形ではないか——と考えた。
全体として嫌味的な表現が散見され、気持ちよく読める内容ではなかった。著者の感情を差し引いて事実だけを受け取るぶんには良いが、扱う領域にはやや偏りを感じる。頭のなかにインデックスを貼る目的で読むくらいがちょうどよく、各論点は著者の意見を丸呑みにせず、個別にデータと幅広い意見を踏まえて判断したい。