Zoomの文字起こし、リアルタイム版と録画版は同じなのか?
結論から言うと、本文の一致は94%。残る差は3種類あった。
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相槌の拾い方 :録画版は相槌をクリーンにする
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短い発話の言語取り違え :リアルタイム版はまれに英語化するが、録画版では直っている
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固有名詞・専門用語 :どちらも外す
最初の2つは録画版に分があるが、AIに文字起こしを元に議事録を作らせる用途では大差ない。最も重要な固有名詞や専門用語の取り違えは、どちらのバージョンでも残る。ミーティングの文脈がなければ埋まらないからだ。結局は、会議直後に手に入るリアルタイム版で着手し、コンテキストを持つAIに補完させるのがいちばん早い。以下、順を追って書く。
動機:会議が終わってから議事録に着手できない
ミーティングの議事録は、記憶が新しいうちに整理して残したい。私はその下書きにZoomの文字起こしを使っている。
これまで使っていたのは、クラウド録画の処理が終わったあとにzoom.usにてダウンロードできる文字起こし(以下「録画版 」)だった。録画処理にはそれなりに時間がかかるため、会議が終わってすぐ議事録に取りかかりたくても、文字起こしが手元にない。この待ち時間がネックだった。

zoom.usからダウンロードできる文字起こし(録画版)
普段使うGoogle Meetも事情は近い。会議直後にすぐ文字起こしを開けるわけではなく、体感ではZoomより精度も低いと感じている。
一方、Zoomには会議が終わった直後にダウンロードできる文字起こし(以下「リアルタイム版 」)もある。こちらは会議中にリアルタイムで生成される もので、終了後すぐZoomデスクトップアプリからダウンロード可能だ。

デスクトップアプリからダウンロードできる文字起こし(リアルタイム版)
もしリアルタイム版が録画版と同じ内容なら、録画処理を待たずに議事録へ着手できる。私にとっては、会議の文字起こし運用をMeetからZoomに寄せる動機になりうる。
ただしZoom公式ドキュメントには、この2系統が同じものなのかの記載がない。そもそも録画版が何なのかもはっきりしない。素朴に考えるといくつかの候補が思い当たる。
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(A) 同じ文字起こしが録画と一緒に届くだけ :中身はリアルタイム版と同じで、大容量の録画ファイルと一緒に処理・アップロードされるから時間がかかっている。
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(B) リアルタイム版をブラッシュアップしている :リアルタイム版の文字起こしをクリーニングしている。
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(C) 録画から作り直している :録画が完成したタイミングで、その音声をもとに改めて文字起こししている。
(A)、(B)なら待つ意味はなく、最初からリアルタイム版を使えばいい。どうせこちらもClaude Codeで綺麗にする。(C)なら話は変わる。リアルタイム版が会議中に前から順に処理するのに対し、録画後なら前後の音声まで使えるので、認識精度が高い可能性がある。どれなのかは推測では決まらないので、同一ミーティング(約50分)の2ファイルで実際に比較した。
手法:体裁を捨てて本文だけを比べる
最初は普通の差分(diff)を取ろうとした。これは上手くなかった。理由は以下の2つ。
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タイムスタンプの形式が違う 。リアルタイム版は時刻(09:59:40)、録画版は録画開始からの相対時間(00:00:03.640)。
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区切りの粒度が違う 。同じ50分の会話を、リアルタイム版は約970個、録画版は478個に分割している。
この状態で行単位のdiffを取ると、中身が同じでも形式と区切りが別物なので、ほぼ全行が差分になる。知りたいのは体裁ではなく発話内容だ。そこで、タイムスタンプ・話者ラベル・空白・句読点をすべて除去し、発話テキストだけを連結して文字列として比較した。ちなみに、この比較作業は全部Claude Codeにやらせたので詳細は把握していないし、する気もない。これくらいの、やり方に当たりがつき特に重大でもない仕事は、最近こんな扱いだ。昔の、ちょろっと読むたい記事くらいなら雑にDeepLに突っ込んでさっと読んでおしまいの感覚に近い。
結果:本文は94%一致
正規化したテキストで類似度を測った結果が以下。

区切りやタイムスタンプは大きく違うが、書き起こされた言葉は9割方そろっている。話者別に測っても主要な話者はいずれも0.93を超えた。残る1割弱の差は、性質の異なる3種類に分けられた。
差1:相槌・重複発話の拾い方
リアルタイム版だけにある文字を調べると、その多くが「はい」「うん」「ええ」といった相槌だった。会議中に逐次処理するリアルタイム版はかぶり気味の相槌や繰り返し発言、割り込みまで細かく拾い、録画版は発話のまとまりごとに整理してこれらを間引いていた。
差2:短い発話の言語取り違え
リアルタイム版には、短い日本語の発話がまるごと英語になっている箇所があった。「ありがとうございます」という音声を「Thank you very much.」と書き起こしている。聞き取りを誤ったのではなく、なぜか翻訳してしまったようだが、理由はわからない。
ただし、量はごくわずかだ。50分の会議でこの取り違えは2回だけ、いずれも数語の短い発話で、長い発言がまるごと英語になることはなかった。そして録画版は、同じ箇所をすべて日本語で正しく書き起こしている。この点は録画版に軍配が上がる。
差3:固有名詞・専門用語の認識
3つ目は、固有名詞や専門用語の書き取りが食い違う点。これはどちらのバージョンも安定しない。
例えば、 Codex を、リアルタイム版は「エコデックス」、録画版は「コレックス」と、別々の外し方をしていた。
他にも、人名・組織名・固有の専門用語はいずれのファイルでも取り違えが目立った。
結果まとめ
はっきりしたのは、リアルタイム版と録画版が、体裁だけでなく中身まで違うということだ。タイムスタンプや区切りが違うのは当然として、書き起こされた言葉そのものがずれていた。同じ一文で固有名詞の綴りが違い(差3)、片方にしかない英語化もある(差2)。少なくとも、録画版がリアルタイム版の単なるコピー(A)でないことは確かだ。リアルタイム版を文脈で書き直したもの(B)なのか、録画から起こし直したもの(C)なのかは、このデータだけでは決められない。ただ、どちらでも以降の話は変わらない。
差を分けると、相槌や重複発話、短い発話の英語化は、録画版のほうがきれいだった。表層のノイズは録画版で均されている。
しかし、肝心の固有名詞・専門用語はどちらもダメだった。録画版でも改善されていない。結局のところZoomはそのミーティングの文脈、すなわち誰が参加し何のプロジェクトの話なのか、を持っていない。固有名詞はその場の文脈に依存する情報で、音声や一般的な言語知識からは当てられない。だから、どんな作り直しをしても外れる。
ということは、議事録づくりで録画処理を待つ意味はない。録画版が表層で多少きれいでも、本当に重要な固有名詞は待っても直らないからだ。会議直後に手に入るリアルタイム版で着手し、仕上げは、ミーティングの背景を把握したAIに文字起こしを渡して補完させればいい。私の場合は、関連資料やプロジェクトの文脈を読み込ませた環境でClaude Codeを起動し、そこにこの文字起こしを渡している。ミーティングの背景を知っているAIなら、文字起こしに失敗した固有名詞も文脈から直せる。