新着論文フィードツール Meta
マーク・ザッカーバーグからメールが届きました。
というのはだいぶ盛った表現ですが、氏と奥様が設立した合同会社であるChan Zuckerberg Initiativeから新サービスのお知らせが届きました。
どうやら生命医学の文献をコンテキストから探してくれるツールだそうです。
Thanks for waiting—here’s your early access invitation.
We’ve been hard at work building Meta to help you organize and explore science and are excited for you to try it!
You can sign up for free with this invite link.
What is Meta?
From preprints to papers, biomedical science has now outpaced search. Meta is a free discovery tool that powers research with context, not keywords. Using machine learning to map biomedical science as it happens, Meta is built to help researchers easily follow developments, intersections, and emerging trends in science.– The Meta Team
Chan Zuckerberg Initiativeとは
と、その前にChan Zuckerberg Initiativeについて簡単に紹介します。
先述の通りFacebook創設者のMark Zuckerbergとその妻 Priscilla Chanが2015年に設立した合同会社です。
目的は科学、教育および正義や機会に関する取り組みを盛り上げようぜ的な感じです。
Our mission is to find new ways to leverage technology, community-driven solutions, and collaboration to accelerate progress in Science, Education, and within our Justice & Opportunity work.
https://chanzuckerberg.com/
Education, Justice & Opportunity and Scienceが3本柱であることはよくわかります。
ざっとそれぞれの領域における取り組みはこんな感じ。
- Education: 全ての子供をサポートすることや科学に基づいた教育法の確立
- Justice & Opportunity: 司法改革、住宅支援、移民支援
- Science: オープンかつ協働的科学の支援
今回はScience領域の取り組みとして科学研究を促進するツールを作ったよという案内でした。
Metaとは
前置きが長くなりました。早速案内があったMetaを使ってみます。
自己紹介によればキーコンセプトは以下の通り
- 重要な論文を見逃さない
- 発展や新たなトレンドが生まれるのをチェック
- あとで読むために論文を保存
リンク先へ飛ぶと特に変哲のない登録画面。
関心領域の専門用語を登録。絶対読むやつとまぁ読むやつ。
特に現状追っているライフサイエンスの領域があるわけではないのでTry exampleで適当なものを入れてもらう。
フィードを自動生成してくれる。
「discovery tool that powers research with context, not keywords.」と書いてあったので文脈を考慮した検索ができるツールかと思いましたが、 確かに「help researchers easily follow developments, intersections, and emerging trends in science.」と書いてありました。
どうやら能動的な検索行為をサポートするんじゃなくて、新着論文をチェックするツールのようです。
見た目はこんな感じ。
触りながら細かくみていきます。
Feed管理ペイン
まずは左のFeedとLaibraryの管理領域。
ここでFeedの編集やシェアができます。自分が追っている領域を共有できるのは嬉しい機能ですね。
Edit Feedをクリックすると初期登録時より細かい設定ができます。毎週何本くらいの論文がフィードされるかわかるのは嬉しいデザインです。
新しいFeedを作ることもできるので関心領域ごとにFeedを分けることができます。
カテゴリーから選ぶことも可能です。
老化カテゴリーには46のフィードがあらかじめ登録されていました。
Libraryというのはお気に入りリストですね。論文にチェックを入れるとここに保存されます。
Feedペイン
真ん中は論文のリスト。新着順に並んでいるようです。
日, 週, 月ごとにまとめたり、文献の種類(レビュー, 症例報告など)で表示を切り替えたりできるみたいですがかなりシンプルな機能です。
気になったのはその論文に言及したツイート数やMendeleyで読まれた回数が表示される機能。
確かなんかの文献管理ソフトでもSNSでシェアされた回数が表示できたような(うろ覚え)。。。研究者もSNSでの話題性は一つ指標になるようですね。
近年 自分が読んだ論文を投稿するアカウントだったり、自分が投稿した論文をわかりやすくまとめてSNSにシェアしたりそういう活動が活発です。インパクトファクターよりも信頼できる指標になるんでしょうか?興味深い点です。
詳細ペイン
最後に一番右に詳細情報が出ます。
論文タイトルをクリックすると本文が、
ジャーナル名をクリックするとジャーナルの情報が
著者をクリックすると著者情報が表示されます。
ここら辺のインタラクティブな操作はスピード感があっていいですね。
トップページ
一通り触ってトップページで流行りの領域や注目されている論文を表示するページがあることに気づきました。
生命医学全体を俯瞰して話題をカバーしとくのには使えそう。
所感
コンテキストを考慮した検索をするという情報に飛びつきましたが、Siri的に自然言語で問い合わせたらお望みの論文を見つけてくれるわけではありませんでした。残念。
RSSリーダーのように毎朝フィードを流し見て、気になった論文をピックアップするという使い方を目指して作られたんでしょう。
Libraryも複数作ることができますがあまり論文管理機能は充実してないようです。見直すのには適していないっぽい。何かしらの論文管理ツールと組み合わせて使うのが良さそうです。
日々どのように新しい論文を探すかというのは弊社でも多くの研究者の方から聞く要望です。
特に強い希望があるのは、自分が検索ワードとして引っ掛けられない(知らない単語)けど実は研究のアイディアを膨らませてくれるような論文をオススメしてほしいという要望です。
そういうサジェストを求めるなら今回のMetaはちょっと違うかなという感じがしました。自分できっちり検索ワードを決めていたのでGoogle Scholarのアラート機能と本質的には同じ。
ただUIはとても気持ちが良いので情報系の論文もカバーし始めたら使ってみたいです。本文に飛ぶ前にジャーナルや著者の情報だったりSNSシェアの状態がわかるのは論文を読むかどうかの判断に軸を増やしてくれそうです。
AI2もSemantic Sanityという論文フィーダーのベータ版を公開しています。まだサジェストの精度に難はありますが、ここら辺の領域は各種論文管理ツールでも組み込まれていてこれから流行っていきそうな領域です。
研究者が自分で論文を検索するという作業の負担がどんどん減っていくと良いですね。